公益財団法人古泉財団

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2025年度奨学生選考委員会

講評

 皆様、本日は、すべての議案を滞りなく終了することができました。
 ご多忙の中ご出席いただき、議事進行にご協力いただきまして有難うございました。
 今年の選考を振り返ると、古泉財団の奨学金の趣旨が理解され、多くの大学に着実に浸透していることを実感いたしました。
 新規奨学生のうち、県内出身者が半数を占め、女子学生は六割を超えています。昨年に引き続き、次代を担う意欲的な学生が多く、心強く感じております。
 また、継続奨学生の報告からは、それぞれが明確な目的意識を持ち、日々努力している様子が伝わってきて、頼もしく感じております。
 一例として、昨年3月20日に行われた新潟ハーフマラソンで発生した救急事案に際し、新潟医療福祉大学救急救命学科の学生五人が適切に対処し、昨年12月に新潟市から感謝状を贈られたというニュースがございました。
 この中の一人は、今年卒業した女子学生ですが、古泉財団の奨学生でした。
 4月から地元の北海道で救命救急士として活躍しておられるということです。
 さらに、卒業生の多くが新潟県内で進学し、または就職しており、過半数が地域に留まっています。
 この事実は、本奨学金の趣旨に照らしても、今後の地域社会への貢献が大いに期待できる成果であると思います。

 さて、今年度で10回目となる選考を終えました。
 以前よりお伝えしてきた通り、この節目を機に、制度の見直しについて、代表理事とご相談いたしまして、大学側の負担軽減と学生側の利便性向上に配慮して、以下のような五点の変更を行うことといたしました。
 一点目は家計基準の上限引き上げです。共働き世帯の増加や賃上げの動きを背景に、家計の状況が十年前と比べて大きく変化しています。
 これに対応して、給付型を希望しながらも、貸与型しか選択できなかった学生にも応募の機会を広げることといたします。
 二点目は募集期間の前倒しです。
 これまで二月からの募集でしたが、春休みと重なり、候補者選定が難しいという声が寄せられていました。
 そこで来年度からは、一月から募集を始め、学生との接点が確保しやすくなるよう改めます。
 三点目として、海外留学奨学金との併給を可能とします。
 海外留学が盛んになりつつある中、政府の支援制度との併用を希望する声が寄せられております。より多くの学生が利用できるよう、制度の柔軟性を高めることとします。
 四点目は奨学金の年額一括支給です。
 留学や資格取得などで、一度にまとまった資金を必要とする学生が増えています。そのため、これまでの年二回支給から、採用時に年額を一括で支給する方式へと変更いたします。
 五点目は補欠採用の導入です。
 これまで21位以下は一律不採用としていましたが、近年、優秀な学生が多く、不採用とするには惜しいケースもあります。
 そこで、21位以下から若干名を補欠採用とし、年度内に辞退者が出た場合に追加採用することといたします。
 以上五点が今回の主な変更点です。これら以外については、これまで通りです。
 例えば、本奨学金は、高等教育の修学支援新制度を含む、他の給付型奨学金との併給は認めておりません。
 今後とも、政府支援の対象外となる中間層の学生を中心に支援を続けてまいります。
 各大学におかれましては、来年度も、社会の発展に寄与する有望な学生のご推薦をいただきたいと願っております。

 続いて、最近話題となっている「THE 日本大学ランキング2025」について触れておきたいと思います。
 これは、英国の教育専門機関タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが4月3日に発表したもので、教育リソース、教育充実度、教育成果、国際性の4分野、16項目で構成され、大学の教育力を総合的に表しています。
 新潟県内では、長岡技術科学大が29位、新潟大が46位にランクインいたしました。
 また、新潟県立大が100位以内、新潟医療福祉大が200位以内に入りました。
 このように、県内の大学が一定の評価を受けたことは、大変喜ばしく、今後の発展に期待したいと思います。

 最後に、本年度も多くの優れた候補者をご推薦いただいた大学関係者の皆様、そして応募してくださった学生の皆さんに、あらためて感謝申し上げます。
 今年、卒業された奨学生の皆さんには、地域社会の未来を担う人材として活躍されますよう、また、今年採用された奨学生の皆さんには、それぞれの目標の実現に向けて努力されますようお願いいたしまして、本日の講評とさせていただきます。
 本日は誠に有難うございました。

2025年6月3日
選考委員長  長谷川 彰

選考結果

大学名 2年生 3年生 4年生 合 計
新潟大学 1名 0名 1名 2名
上越教育大学 1名 2名 1名 4名
長岡技術科学大学 2名 2名 2名 6名
新潟県立大学 0名 0名 0名 0名
長岡造形大学 1名 1名 1名 3名
新潟県立看護大学 0名 2名 0名 2名
新潟医療福祉大学 4名 2名 0名 6名
新潟青陵大学 0名 1名 0名 1名
新潟国際情報大学 0名 2名 1名 3名
新潟リハビリテーション大学 0名 0名 0名 0名
新潟工科大学 3名 0名 0名 3名
敬和学園大学 0名 1名 2名 3名
長岡大学 2名 2名 2名 6名
新潟経営大学 1名 1名 1名 3名
新潟産業大学 2名 1名 2名 5名
新潟薬科大学 0名 1名 0名 1名
新潟食料農業大学 0名 1名 2名 3名
長岡崇徳大学 0名 0名 0名 0名
開志専門職大学 1名 0名 1名 2名
三条市立大学 2名 0名 0名 2名
合計 20名 19名 16名 55名
平均GPA 3.35 3.42 3.31 3.36

意見

【奨学生の選考について】
 ・応募者の家計状況には幅があり、家計支持者の収入が高い学生の応募も見受けられる。
 ・選考の結果、家計支持者の収入が高い学生は成績が良好で、順位が上位に来る傾向がある。

【推薦のあり方について】
 ・募集20名に対して応募20名なので、より多くの応募があるべきと考える。
 ・大学の視点から見ると家庭環境が厳しいと考えられる学生でも、本人はその自覚がない場合がある。
 ・声をかけることで応募する学生はいるものの、自発的に奨学金を申請する学生の数は減少している。
 ・募集条件が明示されていても、事務局へ相談して応募する学生は少なくなっている。
 ・条件から少し外れるだけで応募を諦める学生が多く、奨学金に対する切迫感を持っていないことが多い。
 ・保護者も経済的な問題について子どもに話をしたがらない。
 ・事務局や先生も学生に寄り添っていかないと、学生を卒業まで支援することが難しくなっている。
 ・政府の修学支援を利用する学生が増加し、政府支援を受ける層とそれ以外の層で二極化が進んでいる。
 ・政府の修学支援を受けられるのは、所得が低い家庭や子どもが多い家庭に限定されている。
 ・政府支援を受けられない中間層の家庭の学生は、進学や生活費の面で迷いを抱えているように見える。
 ・中間層の学生の多くは貸与奨学金を利用するが、将来の返済負担を避け、アルバイトを増やす傾向がある。

【奨学金のあり方について】
 ・ひとり親家庭の学生は多く存在するため、奨学金がすべてに行き渡るわけではないが、その重要性は高い。
 ・学生支援機構、民間財団、大学独自の奨学金が存在するが、この2、3年で申請のあり方が変化している。
 ・以前は応募者が多かった奨学金制度においても、2、3年前から応募者の減少が顕著になっている。
 ・奨学金制度を運営する団体は、学生への効果的なアプローチ方法という課題に直面している。

【総括】
 ・制度の一部変更を行い、引続き、政府支援の対象外となる中間層の学生を中心に、社会の発展に寄与する有望な学生への支援を行う。